とにかく読んでーーー!
やられた、またやられちゃいました。
完全に騙された。
芦沢さんの本はいつも最後数ページで「え?」となってもう一回読み返したくなりますよね。なので警戒して読んでいたんですが、またしても「先入観」に負けてしまいました。本という性質を本当にうまく利用していると毎回感心させられます。
そして2回目読んでも面白い。
別の話ととして読むことができます。
思わず2回目もじっくり読んで「ここ、うわ~うまいな~」とやっちゃいます。
ざっくりあらすじ。
奈津子と紗英はとても仲が良く、「なっちゃん」「紗英」とお互いを呼び合っています。幼い「りりちゃん」を育てているなっちゃんは、仕事をしていないことにコンプレックスを持っています。一方、子供が欲しいのに授かれない紗英は、なっちゃんをうらやましく思っています。
二人の関係は良好に思えていましたが、とある日なっちゃんの目の前で紗英の夫が死にます。これをきっかけに二人の関係も変わっていきます。
ここから先はネタバレなので、知りたくない人は読まないでください。
最初に読んだときに、なっちゃんが殺したとは書いてないし、そう見せかけて実は殺してないんじゃない?と思っていました。でも肝心のトリックはここじゃなかったー!「ちゃん」で呼ぶ、というところに「友達だろう」という先入観が入ってしまうんですね。まさかこの二人が親子だとは思いませんでした。途中ちょっと2人の関係近すぎないか?とは思うのですが、友達の範疇に押しとどめられるギリギリのラインなので話をそのまま推し進めてしまいました。
途中なっちゃんが旦那とおむつで言い争う場面があります。
ここもやられた...
りりちゃんは紙おむつなのですが、紗英の時には布おむつなんです。
そして物語の冒頭に出てくるおむつを替えるシーン。
ここではちゃんとオムツが布であることが、間違えておむつ替えをもう一度思想になることを描くことで書かれているんです。
この時点で時系列が違うのですが、一読した時には全く気づきませんでした。
またファミレスでなっちゃん、紗英、りりちゃん、紗英の妹のまえりがご飯を食べるシーン。なっちゃんが「お母さんとファミレス、ひさしぶりでしょう?」とりりちゃんに言うのです。ちょっと違和感がありますが、このお母さんがまさかまりえを刺していたとは....。りりが泣きながら「おああうぁん」といった後に、なっちゃんが「ああまりえ?」と聞き返しているシーンも、「おねえちゃん」かと思ってたけど「お母さん」って泣いてたのか!!!と後からわかる...なんてトリックだ。
この話を読んだ後に、いわゆる毒親みたいなものをテーマにしているのかな、と思いました。でも最後のラストを読んだら、それ以上に「母親の愛」みたいなものも描きたかったのかな、と思いました。芦沢さんは母になる、という大変さや愛情や、いろんな面を描くのが本当に上手です。いい面も悪い面も両方あってこその子育て。その二面性をスッと入る言葉で描き切っているなと思いました。
とにかく面白かった。